前回の続き
真っ暗な住宅街ひた歩く。たまに後ろからきた選手に抜かれますが、皆疲労の滲んだ後ろ姿で足取りは重い。誘導灯を持ったスタッフに従い角を曲がるとA9の明かりが近づいてきた。
長かった旅が終わる。
A9 富士吉田
と、エイドの入り口で突然声をかけられ。向いた先にはなんとキーチさん!?マジ!?22時よ!?来るかどうかもわからない奴のことをずっと待っていてくれたなんて。しかもこの寒さの中・・・。
予期せぬサプライズでエールを送ってくれる彼にここで終わりにするとはさすがに言えず、、戸惑いつつ声援に応えてエイドにイン。
ブースにはたくさんのスタッフが控えていて声援を受けるも、気持ちが終わってるだけに苦笑いしか返せなかった。空腹をおぼえたので温かいうどんをいただく。
ああ、美味い…
吐き気で胃が何も受けつけなくなってレースを終えた人がたくさんいるなか、こうして30時間以上も頑張ってくれた胃に感謝。そういえば途中吐き気で走れなくなった選手はどうなったかな。天子山地で転倒して動けなくなってた人のその後も気になる。Hさんはもうゴールしただろうか。いつ来るかわからないのにわざわざ応援に駆けつけてくれたKさんとキーチさん。”今日は自分の走りができないので止めにしました”なんて報告したらどんな顔するかな。いろいろあったけど、楽しかったなUTMF。
ぼんやりうどんをすすってたら、いろんな事が次から次へと思い出されてくる。
エイドには青梅トレラン部Nさんやここまで何度も見た選手の姿。そしてどの顔もいい表情してるのが印象的だった。疲労をにじませてはいるんだけど、目が死んでない。同じ150kmを走ってきて、先へ進む者と、ここで終える者の違い。
再び自問自答、これでいいのか?
エイドの外に目をやると椅子を手に去るキーチさんの後ろ姿。
この時何かが吹っ切れて、気づいたら大声でキーチさんを呼び戻してた。
彼は先週のチャレンジ富士五湖でDNF。そのことを知ってるだけに、言わんとすることがビシバシ伝わってくる。Thanks キーチさん!
オシ!もうペースは上がらないし何人に抜かされるかわからないけど、足が動く限りフィニッシュ目指そう。寒さに震えるキーチさんを見送り、こちらはマッサージブースへ。今回は念入りに15分&テーピングをお願いしました。マッサージされながら気づけば寝るzzzz → 痛くて目が覚める → 寝るzzz のくり返し。
スタッフの声援に見送られながら、フィニッシュ目指して最後のエイドを出発!
IN:21時49分
OUT:22時53分
順位:181(+15)
晴れ晴れとした気分でこれなら霜山も勢いでなんとか越えられるとパックリ開いた扉へ突入!
そして完全にスイッチが切れた。
ここから山頂までは寝てるのか起きてるのかまったくわからない状態で夢と幻の中をさまよいながら上ってました。この区間は記憶があやふやで、唯一覚えているのがどこかで崖側を踏み抜きかけたこと。さすがに身の危険を感じて落ち葉の上に横になりましたが、風が強くて数分後には寒さに震えて目が覚め。途中何人かエマージェンシーシートにくるまってる人がいたのでそうしようか迷いましたが、寝るならもっと標高を下げてからと思いまどろみながら先に進みます。こんな状態でもほとんど抜かされないのだから、ほとんどの人がペースを落としてたんだと思います。もっとも抜かされたことすら気づいてない可能性もありますが・・・。
寝ながらも足は動いていたらしく、気づけば霜山ピークでゴールまで残り7km。
ここからはマッサージ効果もあり多少は走って下ることができた。そして眼下には河口湖。
静まり返った住宅街を抜けて湖畔へ。スタッフの誘導で湖沿いの道を行く。ウルトラトレイルでは街に出たらレースはそこで終了。その先は抜かさないなんてことを以前ヤマケンさんが言ってたのを思い出す。もし足が活きてて後ろから追い上げてこられたら頑張っちゃいそうな気もしますが、幸い前にも後ろにも他の選手は見られず、ラストの瞬間をゆっくり味わえそうだ。
FINISH 大池公園
対岸に見えるゴール会場の灯を眺めながらのファイナルランは、色々な人への感謝の気持ち、走りきった達成感、終わることへの安堵感、そして終わってしまうことへの若干の寂しさなど、フルマラソンやウルトラマラソンでは感じたことのない、100マイル独特の感情に浸っていました。
会場に入るとたくさんのスタッフが声をかけてくれ、曲がった先には明るく照らし出されたゴールゲート。この瞬間は一生忘れない。
FINISH:35時間02分
順位:203(+22)
完走証とフィニッシャーズベストを受け取ります。このフィニッシャーズベストにはちょいと憧れがあって、それを自分が手にする日がくるなんて。あまりに思い入れがありすぎて着れなそうですが。
レース前に鏑木さんが言っていた「自分への挑戦」の意味がよくわかりました。それは体力の限界だけでなく、メンタルの限界にも挑戦したなと。杓子山でなぜレースをやめようと決心したのか、今となっては正常ではなかったと思えますが、あの時はやめることしか考えられなかった。あそこでやめなくてよかったという思いはもちろんありますが、それはあくまでも結果論。やめていたとしても、それを糧にしてたと思います。そうした自分の弱さを知れたのも100マイルに挑戦したからこそで、UTMFという旅を通してとことんまで自分と向き合うことができたのはすごくいい経験だった。
今回走ってみてわかったのが、自分はエンデュランスが好きだということ。レース前の道具選定から、高低図を見ながらの事前プランニング、エイドの過ごし方にいたるまで沢山の要素が結果になって現れるところなど最高に面白いと感じます。一度や二度沈んだくらいでレースは終わらない。何度もくる波を乗り越えてゴールに到達した時の多幸感はもはや病みつきです。
レース後
北麓駐車場行きのバスに乗り込むとまばたき一回で駐車場にワープ(笑
さすがにそこから東京まで運転できる気がせず車内で泥のように眠る。起きると足のむくみや肩こりで体はボロボロでしたが、心は晴れやかだった日曜日の朝。
ありがとう富士山、また来年。
長文レポにお付き合いありがとうございました。最後に1回レースの反省(装備品やらタイムなど今後に向けた備忘録)記事で終わります。
レポ、ちょー面白い!!!!
毎回楽しみにしてました!!
確かにチョー寒かった 笑
南関東の昼間の格好でそのまま来てしまったアホです。
9/10でリタイアした1位より
ビリで完走した者の方がカッコイイ
と、僕は
リタイアした情けない自分を恨む日々が1年間続きそうです。
本当に完走出来てよかった!!
その感動に一瞬でも携われてよかった!
キーチさん
いやはや、今回は疲労と睡眠で完全にダークサイドに落ちかけてましたわ。すんでのところを引き上げてくれてありがとう!
直前にリタイアを経験したからこその覇気あるメッセージには感謝してます^^
走る or 終えるは次に活かせばどちらも英断。
毎レースを糧にお互い成長していきましょ!
キーチさんの次回ウルトラに超期待!
ゴールで待ってたらリタイアしない?(笑
長旅お疲れ様でした。
自分の小さな経験からは想像もつかないくらいに、過酷な旅だったんでしょうね。
無事ゴール出来たことと、さらには途中で走りに納得行かなくてDNFを考えるなんて、畏敬の念しかありません。
きっとものすごい達成感もあったことと思います。
そして、まだ経験したことがありませんが、トレランにチャレンジしてほんの少しでも同じ体験をしてみたいなあ、という意欲をかきたてられるようなレポでした。(これまでも大変刺激を頂いておりますが、今回は特に)
トレランの中でも苛烈極めるUTMF完走できるなら、陸上自衛隊の空挺部隊にでも入れてしまいそうですね。
今後もご活躍を期待しております。
ジム改さん
いつもコメントありがとうございます。
歯車がうまく噛み合わなくなると途端に弱気になるのが自分のダメなところで、今回はそれが如実に現れましたね。。疲労で判断能力が鈍っていたこともありメンタル面でも山あり谷あり。今回のレースは色々学んだ気がします。
フルマラソンだと一度沈んだら終わりのパターンが多いですが、レースが長時間に渡るトレランだと十分盛り返せるのも魅力の一つ。私はサブ4ぐらいの頃から山も走りはじめましたが、トレランは難しくありません。少しづつ距離をのばしていけば「いつかは」が現実になります。ジム改さんもぜひそうした体験をして、その時の感想をお聞かせください^^
UTMFレポ、有り難うございました!
富士山での過酷さや充実感に溢れるレポ、とても励みになりました。本当にお疲れさまです。
寝ずに走ったり幻覚を見たり、途方もないです。そうやって徹底的に自分と向き合う姿、カッコいいなと思います。ハセツネのレポだったかな、回復を待って走り出した姿にも勇気を貰いましたが、今回DNFまで決意されていたんですね。そこからのもうひと踏ん張り、とても素晴らしいです!改めて、完走おめでとうございます!
私は、こちらのブログを見てマラソンを学び、この春にフル・ウルトラを経て、ようやく夏にトレニックワールドで山デビューに辿り着きました。いつかはUTMF!コーヘイさんのお陰です。またの記事、楽しみにしています✨
遠藤さん
ありがとうございます。
そういえばハセツネでも完全に足止まったことありましたね、あの時もすんでのところでDNFを回避したっけ。。ランニング人生で未だDNF未経験なのはたまたまなのか、まだまだ追い込みが足りないのか^^;
レポに刺激を受けてやってみようと思っていただけたのなら本望です。こんな楽しい世界をぜひ他の人にも味わってもらいたい、こんな自分でもできたのだから他の人だってきっと出来るはず!そんな思いで書いているので、遠藤さんの「いつか」も追い続ければ必ず現実になります。
まずはトレニックワールド、頑張ってください!
ながいレース、本当にお疲れさまでした。
そして、100マイル走破! おめでとうございます。100マイラーかっけー(^o^)
途中でやめようとした心境、とってもよくわかります。
なぜなら、自分も3月の小江戸大江戸の後半、同じような気持ちになったから(苦笑)。
書いたら長くなっちゃった(汗)ので割愛しますが、
ほとんど負け試合のようなぼろぼろの、悔しさばかりのレースでも、
経験したこと、ゴールまで行けたのは糧になるはず、と信じています。
しばらくはしっかり心身を休めて、次に向かわれてください。
どこかで(信越で?笑)お会いして四方山話ができる日を楽しみにしています。
わたいは、今週末、また懲りずに高原の長いのを走りにいきます。
きじすけさん
さすが超ロングフリークのきじすけさん、当たり前のように経験されてますね。きじすけさんがおっしゃるとおりすべての経験は糧になる、、というかする!かつては小江戸大江戸なんて考えられませんでしたが、最近ちょびっとだけ興味が出てきましたよ。ちょびっとだけ^^;
今回のUTMF完走で信越は長い方に出る資格を得られたので、お会いできたら四方山話しましょう!
今週末アレですね、、天気が若干不安な感じですが楽しんできてくださいね!
ごめんなさーい。「わたい」→「わたし」、です。間抜けだ(汗)
訂正がてら、昨日初読でちょっと涙腺が決壊しそうになったことを
付け加えさせていただきます(*^_^*)