VESPA齋藤さんの補給食講座を受けてきた
トレイルランナー必見!

少し前の話ですが、UTMF2018の直前に立川のトレランショップ「Trippers」にて『教えてVESPA齋藤さん!〜トレイルランニング補給講座〜』を受けてきました。補給の基本である「エネルギー」「水分」「塩分」の解説や、集まったランナーの質問に斎藤さんが答えてくれるといった内容はUTMF直前だったこともあってとても参考になった。ヤマケンさんをはじめ、多くのプロをサポートする斎藤さんが語る内容は目からうろこのオンパレード。

なお、栄養学は日々情報が更新されていて、齋藤さんも講座の中で昨年まで自分はこう言っていたけれど、現在はこうですと訂正されていました。今回ご紹介するのは2018年4月時点での情報です。

補給の基本その1:エネルギー


人間の体に蓄えられるエネルギーの満タン量は2000kcal。75%(約1500kcal)は大きな筋肉、残り20%は肝臓に蓄えられている。エネルギー消費量はMETZ(METS x 運動時間(h) x 体重(kg) x 1.05)を使って計算する。※運動歴によっても個人差があるのであくまでも目安。

引用:厚生労働省

マラソンとトレイルレースでは心拍域が違うため、1時間あたりの消費エネルギー計算式は異なる。

サブ4の場合:体重 × 12倍
トレイルレースの場合:体重 × 8倍

トレイルレースは心拍域が低いので体脂肪からもエネルギーを使うことができ、この時使えるカロリー目安はそのうちの3割。先程の計算式に総移動時間を7掛けした数値を掛ければ、自分が持っていかなければならない総カロリーが算出できる。(※脂肪代謝で半分走れるという考え方もあるが、事例としては現状ないので3割が妥当。)加えて、1,500kcalはスタート時にタンク内にあるので、その分をマイナスして運動時間で割ると1時間に必要なカロリーがわかる。
自分を例に、目標タイム10時間で走ると想定した場合こうなります。

例:体重60kg 目標タイム10時間
60(kg) × 8(METZ) × 7(10h × 0.7) = 3,360kcal(必要カロリー)
3,360kcal – 1,500kcal(タンク貯蓄分) ÷ 10h(総移動時間) = 186kcal(h)

エイドで固形物を入れることを考えると、レース中はジェルを1時間に1本摂り続ければ糖不足にはならない計算。実際UTMFでもこの計算式で補給食を用意してエネルギー切れとは無縁で走り切ることができました。

血糖値を一気に上げると一気に下がるので、エンデュランスでは血糖値の急激な上昇をいかに抑えるかがコツ。一度に何本もジェルを摂るのではなく、時間をあけて少しづつ摂るのがよい。エイドで摂る固形物も、ご飯は一気に血糖値が上がりやすいので小さなおにぎりにして少しづつ食べるのがよい。固形物は消化されやすいようによく噛んでゆっくり食べる。コーラもガブ飲みしないで少しだけ飲むようにする。エイドで1分や2分遅くなろうが、その後で10分足を止めるよりは遥かにマシ。

血糖値が穏やかに上がり、穏やかに下がる。一定の心拍数で長く走り続けるというのがエンデュランスランでは重要。普段の生活でもこのことを意識するのが筋力を鍛えるのと同じぐらい大事。GI値(血糖値の上昇度合いを間接的に表現する数値)を参考に高い物と低い物を頭に入れておくとよい。

補給の基本その2:水分


水分補給とはのどが渇いたら飲むというものではなく常に満たされた状態を保つ。バスタブに例えると満タンの状態で栓を抜き、下から出ていく分を補充して常に一定に保つ行為。多少ジェルを摂り忘れても動けるが、水がなくなったらお終い。エネルギー切れ(ハンガーノック)は回復できても、脱水を回復させるのはかなり困難。とにかく水が重要。

最適な水分補給量を知るために、走り出す前と走った後の体重を測って自分の発汗量を知る。体重が減った分の9割が水分量なのでその分を補給するようにする。日々のトレーニングで温度と減った水分量を把握しておくのがよい。人間の体は1.5~1.8Lが1時間にうけつけられる水の最大量と言われている。それ以上必要になる場合はスピードを落として汗の量を減らさなければならない。寒い時に吐く息が真っ白の場合は、1時間に1L水分を放出している。夏の飲み過ぎ、冬の脱水には要注意。

補給の基本その3:塩分


水を飲すぎると低ナトリウム血症になり、急に汗の量が増えたり汗が止まってむくなどの症状が出る。それを防ぐためには水だけでなく塩分が必要で、飲んだ水が浸透圧で吸収される。塩でも効果は一緒だが、胃の粘膜にダメージを与えるリスクがあるのでレース中は塩熱サプリなどが無難。塩熱サプリの摂る量は1時間に1粒を目安に調整。

エイドにある味噌汁や梅干しはそこまで塩分濃度が高くないので、あくまでリフレッシュと考える。特に味噌汁は水分なので飲み過ぎ注意。もし脱水の症状が出た場合は、水の量は変えずに塩分濃度を増やすのがよい。その意味でOS1は脱水時には効果的だが、塩分濃度が高いため普段使いでは給水効率が悪い。もし使用するなら3倍に薄めて使うのがよい。

その他

補給物の準備

補給は絶対に自分がまずいと思わない物を選択する。おいしい思った物とおいしくないと思った物で吸収効率が3倍異なるという事例もあるので、人がいいと言ったから使うのは避ける。ジェルは30~40分で吸収される。UTMFを30時間目安にするならジェルを中心に組み立て、40時間ならジェルと固形を半々がいいだろう。固形物のデメリットは揺れによって消化能力が急激に落ちること。そこで、走る、下るようなパートはジェルにして、ゆっくり上るパートを固形にするのがよい。

長いレースを完走するための条件

フィジカル、補給はもちろん大事だが、メンタルも大事。アドレナリンが出ると代謝が落ちて吸収も悪くなる。不安な状態でレースを走ると結果が全然違う。持ち物や補給食の準備は万端にして不安要素を極力取り除くのがよい。

カーボローディング

やらないよりはやったほうがよい。普段は炭水化物50%、タンパク質25% 野菜繊維25%が合理的と言われているが、直前は炭水化物の量を普段の1.2倍ぐらいまであげる。例、お茶碗1杯を1.2杯ぐらいに増やす。

野菜や肉などの繊維を食べるのは1日前までにする。繊維が腸の残ると吸収を遅くするので、レースまでに胃の中に無い状態にする。繊維は排便効果があるので、腸壁をきれいにする目的でレース前にすべて便で出すのがいい。キレイな腸はジェルなどの吸収をよくするのでレース前になるべく腸をキレイな状態で迎える。冷えて固まるすき焼きの脂のようなものが一番よくない。
スタート3時間前に食事をするのがいいが、ガソリンタンクを満タンにするため1時間前まで少しづつでも食べ続けて30分前にジェルをとって満タンにするとよい。

カフェイン

カーボローディング中にカフェインも一切摂らないようにすると、レース中に少ないカフェインで効果を期待できる。カフェインは最大60時間で枯渇するという資料が多い。SHOTZを1本(60~100mg)入れると、40分~60分ぐらいで効き始めて4時間ぐらい効いている状態。ただし、カフェインは胃壁を荒らして胃痛の原因になるので注意。また、カフェインタブレットは体に良くない成分が含まれていることが多いので、ジェルで摂る方が無難。奥歯で固いものを噛むと覚醒するので、グミなどを使う手もある。自分なりに才覚する方法があるならカフェインでなくてもいい。

レース直前

毎日走ってる人ほど疲労度がわからなくなる。レースペースで走っても筋疲労は1日半~2日程度で回復するのに対し、内蔵疲労はその倍かかる。レース前には睡眠時間をしっかりとって体を休める。ジョギングは肝臓に負担をかけるので、もしする場合は短時間にする。1週間走らなかったとしても落ちる筋力は少なく、むしろ最高の状態でスタートできる効果の方が大きい。

クエン酸

足や筋肉の乳酸を取る効果はあるが、大量に摂るとクエン酸回路が働き体脂肪と炭水化物の代謝を落としてしまう。乳酸がたまって足がパンパンになったときは、スピードを落として心拍を下げる。そして自分の乳酸をエネルギーにして燃やしてしまう方が効率がいい。長い上りで足がパンパンになった後で平坦路をジョグペースで走ると足が軽くなるのは乳酸がエネルギーに変わったことによるもの。デポバッグなどに入れてエイドで最初にクエン酸を飲むのはいいが、行動中にクエン酸を摂り続けるのは止めたほうがいい。

マグネシウム

下剤の材料なので大量に摂るのはゆるくなるリスクがある。水と塩分を中心に体の調子を見ながらまずは練習で使ってみてから。

アミノ酸

アミノ酸はエネルギーではなくて、疲労回復を目的に摂るならレース後でよい。
VESPAは非加熱のタンパク質。糖質とタンパク質を4対1の割合でとると糖質の吸収効率がよくなる。水分、塩分、エネルギーがしっかり取れている状態でVESPAを摂ると始めて効果を発揮する。心拍を高い所で維持する人で2時間、ゆっくりの場合は3時間がVESPAの効く時間。そこまで頻繁に摂らない場合は、急登など心拍が上がる15分ぐらい前に入れるとよい。エネルギーではなく、燃焼効率を続けるための補佐と理解する。

斎藤さんにUTMFで持っていく予定だった補給食を見てもらったところ、カフェインを減らして後半に持っていくなど組み替えたアドバイスをしてくれました。残念ながら後半は猛烈な眠気でカフェインがまったく効かない状態でしたが、これはまだまだ半人前だから。よく咀嚼せよというアドバイスなどのおかげで、最後までトラブルなく走れた気がしてて以降も実践しています。

冒頭にも書いたとおり栄養学は情報が新しくなっているので、また参加して情報をアップデートしたいと思います。VESPA斎藤さんの補給食講座は定期的にあちこちで開催されているので、もし見つけたらぜひ参加されることをオススメします!

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2 件のコメント

  • 大変参考になりました。
    「1週間走らなかったとしても落ちる筋力は少なく、むしろ最高の状態でスタートできる効果の方が大きい」というのは、レース直前にケガをして、走れなかった時に、意外と調子が良かったりしますが、やはり正しいのですね。
    ただ、レース前にまったく走らないのは、どうにも不安で落ち着きませんが。
    それと、「補給は絶対に自分がまずいと思わない物を選択する。おいしい思った物とおいしくないと思った物で吸収効率が3倍異なるという事例もある」というのも、何となくわかります。口に合わない物を無理に食べると、ストレスになるので、消化吸収の力が落ちるのかもしれませんね。
    たくさんの情報をありがとうございました。

    • 桑原さん

      以前コメントいただいてまして、お待たせしました。
      私も直前は走らずにはいられないタイプなのでその気持よくわかります。これについて補足すると、寝たきりの状態だと1日1%筋肉が落ちるが日常生活で歩行を行っていれば影響は少ないそうです。それよりも優先すべきは、よく休んで(しっかり寝て代謝を促進)回復させた方が遥かにメリットがあると。もし走れなくて不安になる人は短時間で高強度の練習(エアロバイクを一気に漕ぐなど)をした方がまだいい。ジョギングは肝臓を動かし続けることになるのでレース前には長くやらない方がいいんだそうです。

      また、ストレスについてはレース前に忘れ物をして慌ててショップに買いに走ったり、レース中にゴールできないんじゃないかと不安に思ったり。こういうのはすべてストレス(アドレナリンが出て代謝を落とす)につながるので、メンタルトレーニングも重要だと。こっちを鍛えるのはフィジカルよりも難しそうですが^^;

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