ランナーの補給について考える
必要カロリーの計算方法やおすすめの補給食など

先日このブログに以下のようなご質問をいただきました。

実は、5月、横浜に向けて走ったハーフマラソンでガス欠になってしまいました...。エイドだけでなんとかなるだろと、タカをくくっていたのです。以後、試行錯誤して練習していますが、フルマラソン時の装備に不安を思っています。どんな種類のゼリーがよかったとか、水分ボトルにはこんなのを混ぜてますとか。帰宅ランなどの20k程度のLSDでも、補給食はとられてますか?練習での補給にも触れていただけると嬉しいです。

補給については個人差があるのでコレが正解とは言いづらいのですが、自分はこうしていますよという形でお答えしたいと思います。


ガス切れの症状と予防策


まずはガス切れ(=ハンガーノック)の症状と予防策から。

ハンガーノックは、激しく長時間に渡るスポーツの最中、極度の 低血糖状態 に陥ること。日常生活中に発生することは稀である。自動車に例えるならばガス欠であり、肉体がエネルギーを失った状態を意味する。この時、自らの意志とは関係なく、体は動きを停止する。意識がはっきりしている場合でも、思考は通常より鈍る。休息を取ることで、脂肪など分解に時間がかかるエネルギーが供給されて回復する。より早い回復には、ブドウ糖・果糖などの糖質補給が有効である。一番早く回復させるには点滴を打つ。

引用:wikipedia

ハンガーノックの症状には段階があって、空腹感から始まり徐々に力が入らなくなってきます。次第にフラフラしだして手足に痺れを感じると赤信号。力が入らなくなり、それ以上運動を続けることができなくなります。

私のハンガーノック体験

トレランで長時間走り続けている時などこれらの初期症状はよくありますが、過去に1度だけ強烈なハンガーノックに襲われた経験が・・・あれは忘れもしない会社帰りに30km走をした時のこと。

10km過ぎたあたりから空腹感をおぼえつつ、家に帰れば食事が用意されていたので何も摂らずに走っていました。自宅まで残り5kmというところで心拍数が下がり初めてペースダウン。額から冷たい汗が流れ、指先が冷たくなり始めてこれは何かおかしいと感じました。そのまま歩いていると貧血に似た症状でふらつきだして視界が定まらなくなり・・・それ以上は動くことができず住宅街の隅にへたり込みます。そこから動く力も気力も一切湧いて来ず、ぼんやり途方にくれていたところにたまたま通りかかった空車のタクシー!這うようにして乗り込みワンメーターで帰宅した苦い経験があります。あれが山だったらと思うと今でもゾッとします。それ以来、距離を走る時は何か摂るようになったのはもちろんのこと、走っている時に空腹を感じたらコンビニに入って何か摂る or 何も無ければ潔く切り上げるというのが習慣になりました。ハンガーノックはマジ怖い・・・。

ちなみに、真夏で汗を大量に流すような時は糖不足よりもナトリウム切れに注意した方がいいです。

真夏のランニングは経口補水液がオススメ 脱水症とは?ORSの味や成分を徹底比較!

練習中の補給


Q: 帰宅ランなどの20k程度のLSDでも、補給食はとられてますか?
A: 20km程度ならとりませんが、30kmを越える場合は夕方にパンを食べたりします。もしくは昼食を遅めにしていつもより多めに食べるというのも有効。ロング(30km以上)の場合はダレを防ぐために20kmでジェルを入れることが多いです。

1本で170kcalあり、キャップがついているので複数回に分けての補給も可能です。

真夏の水分補給は経口補水液やスポドリ。

ポイント練習をした後はお約束のプロテイン。

キツめの負荷練習をした後や、疲れがたまっている時はクエン酸が回復に効果的。

フルマラソンでの補給


フルマラソンの必要カロリーでよく言われる計算式が、
体重 × 距離 =必要カロリー

心拍数によっても変わってくるのであくまでも目安ですが、3~4時間だったらだいたいこれぐらいではないでしょうか。自分に当てはめてみると59kg × 42.195km = 2489kcal 。Garminのデータもだいたい一致しています。

人間は平均で1,500~2,000kcal体内に貯蔵できると言われていて、スタート前の未消化分を500kcalとすると60kg前後なら補給をしなくてもゴールまでは持つ(ハンガーノックにはならない)計算。ただし、走り続けるためには糖質だけでなくナトリウムを補給する必要もあるのでジェルで補給した方がパフォーマンス的には断然有利。4時間で走っていた時も3時間を切った今も変わらないのが補給のタイミングで、基本は20kmと30kmの2回ジェルを入れます。

このジェルを入れた瞬間に力がみなぎる(気がする)のも効果としては十分で、実際は入れたジェルが吸収されるのには15分かかるので入れてすぐに力がわくのは気のせいなんですが、脳を騙せればそれでいいんです。
ちなみに、私はエイドステーションで固形物を食べることは皆無です。固形物が消化→吸収されるのに約1時間半かかるので、栄養になるころにはレースが終わってますから。ただし、スイーツを食べると超ハッピーという人は入れる選択肢も十分アリ。脳さえだませば体は動くようになるから人間の体は不思議。

今回ご質問をいただいた方の体重やペース、当日の体調などがわからないので一概には言えませんが、ハーフでガス欠ということはおそらくレース前にしっかり食べれていなかったか。もしくはナトリウム不足という可能性も。

レース2~3日

レース前にはカーボローディングが有効です。一般的なのが、練習量を減らしながら低糖質食で糖を枯渇させて後半で一気に糖を増やす方法。ただ、レース前に食生活を変化させるのは胃腸をこわすリスクもあるので、私は前半の糖枯渇は行わずレースの2~3日前から糖質食の割合を増やすようにしています。この期間にドカ食いはしませんが、しっかり食べます。

以下は私がレースで使っている補給食。

スタート前

手っ取り早く200kcalとナトリウムを補給。グレープ味もけっこう好みで定番アイテム。

アミノ酸と炭水化物を効率よく補給できるのでよく使います。

レース中

練習で使い慣れたピットインジェルはレース中もマストアイテム。冬はスタート前にキャップを一度開けて封を切っておくのがお約束。

ここぞという時の着火剤。足が残っていればブーストしますが、そうでなければ発汗して終わる諸刃の剣。その時の状態で使ったり使わなかったり。

レース後

手荷物に入れておいてゴールした後はまずこれ。

トレランでの補給


ロードと違い高低差の大小で1kmの時間が全然違ってくるので、トレランの補給は時間で計算しています。
(体重+荷物)✕ 7 ✕行動時間(h)-蓄え(1500kcal)

この「 ×7 」の部分は個人差が出るところで、「×10」という人もいれば「×6」という人も。私は過去に10で計算していたのですが、毎回補給食が余るので徐々に減らして今の「×7」に落ち着きました。以下の計算式はあくまでも私仕様なので参考までに。

トレイルはレース中にエイドステーションで補給食が振る舞われるので、エイドの数や距離に応じて持っていく量を調節します。ハセツネだと水分しかもらえないので必要なカロリーをもれなく持って走らなければならず。例えばハセツネで12時間目指すならこんな感じ。
(59 + 3) × 12 × 7 – 1500 = 3,708kcal

実際は脂肪からもエネルギーが使えるのでこの数値通りに持っていくことはありませんが、それでもご覧の通りけっこうな量になる。

ここで問題になるのが果たしてジェルだけで走り続けられるのかということ。必要な栄養値は満たしたとしても空腹感が満たされるわけではなく。場合によっては胃がジェルを一切うけつけなくなるなんてことも。これだけのジェルを入れ続けれたらそりゃ腹もおかしくなりますて・・・。そんなわけで大量のジェルと摂取するようなレース前には2週間前くらいから日常生活でもジェルを入れて胃を慣らすようにしています。昼飯をジェルにしてみたり、おやつタイムに入れてみたり。デスクでジェルを吸ってる姿は奇異の目で見られましたが、もう慣れたらしいw
そのおかげか幸いにもレース中に吐き気を催すことはいまのところ皆無。今度のスカイビュートレイル(129km)は未知の領域なので果たしてどうなりますかね、楽しみ。

ジェルばかりだと胃がおかしくなるので適度に固形物も。

終わりに


栄養学については自分自身まだまだ勉強不足で試行錯誤中。フルマラソンの距離だったら特に考えることもなかったのですが、トレイルの走る距離が増えてくるにつれて補給食の重要性を実感しています。この補給食について有名なのが「ベスパ齋藤の補給講座」で、受講した人のブログを読むだけでもすごく参考になります。いつか受けてみたいと思いつつ、これがめったにやってないんですよね。UTMFが開催される前にはお目にかかれるでしょうか。

今回の記事は私が実践している方法を書いていますが、補給は個人差が大きいです。あくまでも参考程度にして、自分に合った方法を色々試してみてください。そしてオススメの方法やジェルなどあればぜひ教えていただけるとありがたい。
また、ランニングについてのご質問や記事リクエストなどありましたらお気軽にご連絡ください。長く続けてると書くネタがつきてくるのでそうした要望は大歓迎です!

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4 件のコメント

  • いつも参考にさせていただいております。
    ちょうど来月からのフルマラソンに向けて、補給食の検討を始めていたところでした。
    固形食のスポーツようかんを試してみようかなと思います。

    先月の火祭りロードレースでは昨年より8分早くゴールできましたが、それでも目標としていた1時間50分はわずかに及びませんでした。
    不安の残る結果になりましたが、次こそかすみがうらのリベンジを果たすべく、サブ4を目指し30キロ走に励みたいと思います。

    • ジム改さん

      火祭りロードレースお疲れ様でした。灼熱&高低差を考えると記録は出しづらいですよね。ハーフで8分短縮なら大躍進だと思いますよ。かすみまで半年以上あるのでじっくり走り込んでぜひサブ4達成を。ただかすみは年によって当たりハズレ(4月は寒暖差が激しい・・・)があるので、個人的には3月の静岡が気温的におすすめです!

  • 記事にして頂いて、有り難うございます。大変参考になりました!いま思えば、朝食の取り方が甘かったなと思います。消化に良いものをと、ウィダーインを一本食べただけでした。(^_^;)
    初めてのレースで失敗だらけでしたが、こうして先輩方の記事を読み試行錯誤できるのもランの楽しみかなと最近思います。丁寧な記事、有り難うございました❗

    • 遠藤さん

      こちらこそ、有益なご質問ありがとうございました。
      おっしゃる通りで、色々な人のやり方を参考にしつつ自分にベストな方法を見つけるのがこのスポーツの面白いところ。練習方法もしかりで、聞いたり読んだりしたことをアレンジしながら楽しんでいます。遠藤さんの参考情報の一つとして、このブログもお役に立てると幸いです。

      横浜マラソンまであと1ヶ月。頑張ってください!

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